【災害名】

岩手県沿岸北部地震(いわてけんえんがんほくぶじしん)

【時期】

2008年7月24日午前0時26分

【概要】

岩手県洋野町において当初最大震度6強を発表し後に6弱に訂正され、東北地方の太平洋側で震度6弱から5弱、日本海側で最大で震度4の強い揺れを観測した。

その後の10月29日、気象庁は洋野町に設置した震度計に数ミリの隙間があったことから、洋野町大野の震度を「震度6強」から「不明」に訂正すると発表し、この地震の最大震度は青森県八戸市、五戸町、階上町、岩手県野田村などで観測した震度6弱となった。
被害の特徴として、同じ規模の地震と比較して、建物被害が少ないことが挙げられる。

【被害状況】

消防庁のまとめによると、死者1名、負傷者211名、住家の全壊1棟、一部損壊379棟、火災2件となっている(2009年1月13日現在)。
岩手県、青森県を中心に、北海道から千葉県までの8道県で被害が出た。

各地の震度
震度6弱
青森県 八戸市、五戸町、階上町
岩手県 野田村
震度5強
青森県 東北町、南部町、東通村
岩手県 宮古市、久慈市、山田町、普代村、洋野町種市、大船渡市、釜石市、大槌町、二戸市、一戸町、八幡平市、軽米町、北上市、一関市、平泉町、奥州市
宮城県 気仙沼市、涌谷町、栗原市、美里町、大崎市、石巻市
震度5弱
青森県 十和田市、三沢市、野辺地町、七戸町、おいらせ町
岩手県 岩泉町、田野畑村、川井村、陸前高田市、住田町、盛岡市、葛巻町、滝沢村、九戸村、矢巾町、紫波町、花巻市、遠野市、金ケ崎町、藤沢町
宮城県 色麻町、登米市、南三陸町、岩沼市、亘理町、東松島市
震度4
北海道 函館市、様似町、浦幌町、広尾町、釧路市、標津町、別海町
青森県 平内町、つがる市、外ヶ浜町、藤崎町、田舎館村、六戸町、横浜町、六ヶ所村、三戸町、田子町 新郷村、むつ市、大間町、佐井村
岩手県  雫石町 岩手町 西和賀町
宮城県 加美町 本吉町 名取市 角田市 蔵王町 大河原町 村田町 柴田町 川崎町 丸森町 山元町 仙台市青葉区 仙台市宮城野区 仙台市若林区 仙台市太白区 仙台市泉区 塩竈市 利府町 大和町 大郷町 大衡村 女川町
秋田県 井川町 秋田市 由利本荘市 大館市 鹿角市 小坂町 横手市 湯沢市 美郷町 大仙市
山形県 鶴岡市 酒田市 最上町 村山市 中山町
福島県 福島市 須賀川市 二本松市 桑折町 国見町 川俣町 玉川村 古殿町 田村市 伊達市 本宮市 いわき市 相馬市 楢葉町 富岡町 大熊町 双葉町 浪江町 葛尾村 新地町 南相馬市
茨城県 日立市 常陸太田市

地震発生が深夜であったため、被害情報が錯綜した。一部の報道特番では、死者数十人・家屋倒壊数百棟というような情報が流れた。
後に、これは内閣府の被害想定情報がそのまま報道されたことがわかり、訂正した。
青森県、岩手県、宮城県を中心に、建物の天井落下、窓ガラスの破損、停電、断水、落石による道路の通行止め、列車の運休などの被害が報告されており、負傷者も出た。

被害の傾向として、家具の転倒などによる被害が見られなかった一方、避難時に転倒するなどして負傷した例が多かったことが挙げられる。
この原因として、揺れが長かったこと、深夜の発生であったことなどが指摘されている。
被害が少なかったのは、観測された地震波のうち最も強い波は周期1秒~0.1秒と短く、木造家屋などが壊れやすい周期ではなかったことが主因だと考えられている。
そのため、震度6強で想定される被害よりもはるかに少ない被害ですんだ。
また、一帯は13年前に三陸はるか沖地震を始め、過去に何度か災害に遭遇していることにより、住民の防災意識が総じて高く、それに対応するため堅牢な住宅が多いことも被害が少なかった一因として挙げられている。

【特記事項】

その後気象庁は、震度6強を観測した地点の住民に聞き取り調査を行った。
その結果、「(揺れている最中は)這って歩くこともできなかった」という住民が多くいたため、洋野町をはじめ、震度6弱以上を観測した6地点の地震計に問題はないと発表した。

だが、2つある洋野町の地震計のうち1つがずれている可能性があるとして、臨時の地震計を設置した。ちなみに、「揺れている最中は這って歩くことができない」揺れは、震度7に匹敵する強い揺れである(震度6強は「這わないと動けない」ほどの揺れになる)。

しかし、震度6強を観測した洋野町大野からわずか70メートルしか離れていない臨時の地震計とデータを比較したところ、平均で計測震度1.6の誤差が出ていたことがわかり、震度速報などに利用するには適切でないと判断し、洋野町大野の震度を「震度6強」から「不明」とし、またこの地震計の情報を利用しないこととなった。
気象庁の設置環境認定では、Bランク(初動対応の判断に利用する即時の震度情報で発表するには、問題のない設置環境と判断される)だった。今後、全国の震度計の設置環境の見直しが重要視されている。