2020年7月 令和2年7月豪雨

【災害名】 令和2年7月豪雨(れいわ2ねんしちがつごうう) 【時期】 2020年(令和2年)7月3日から7月31日にかけて 【概要】 熊本県を中心に九州や中部地方など日本各地で発生した集中豪雨である。同年7月9日に、当時継続中だった大雨を気象庁が命名し、8月4日に豪雨の期間を7月31日までと発表した。熊本県を中心に被害をもたらしたことから、報道機関等では別称で「熊本豪雨」とも表記している。 【被害状況】 2021年1月14日時点で農林水産に関する被害額は、2208億円となった。・熊本県 (県南地域)・鹿児島県(3日夜から4日昼の豪雨)熊本県を流れる球磨川水系は、八代市、芦北町、球磨村、人吉市、相良村の計13箇所で氾濫・決壊し、約1060ヘクタールが浸水した。 ・長崎県・佐賀県・福岡県・熊本県 (県北地域) ・大分県(6日夕方から7日朝・7日深夜から8日朝の豪雨)福岡県大牟田市では、7月6日午後3時からの3時間で252ミリという「経験したことのない雨量」を観測した。諏訪川は氾濫危険水位に達したが、氾濫は起きなかった。しかし、三川ポンプ場(同市汐屋町)の処理能力を越える雨量だったため、ポンプ場から水が溢れ、内水氾濫が相次いで起きた。筑後川は上流部の大分県内、中流部の福岡県内のそれぞれ一部で氾濫した。また、筑後川流域の福岡県久留米市では支流の山ノ井川や巨瀬川の氾濫により浸水被害がみられた。また内水氾濫の影響による浸水被害もあった。大分県由布市では大分川が庄内町東長宝(小野屋駅周辺)と挾間町下市(天神橋付近)で越流が発生し、市内各地で大分川支流(花合野川、黒川など)の氾濫・土石流や土砂災害も多発したため、災害発生情報が出された。また、大分川では、国直轄水位観測点の由布市の同尻観測所・大分市の府内大橋観測所での水位が観測史上過去最高であった。長崎県大村市では土砂崩れや、小河川の氾濫により道路をふさいで通行不可となった。佐賀県太良町では、6日午後4時半ごろ、民家裏手にて土砂崩れが発生し、2人が負傷した。 ・岐阜県・長野県(7日夜から8日昼の豪雨)岐阜県では8日朝、下呂市萩原町中呂の木曽川水系飛騨川で氾濫が発生した。また、加茂郡白川町河岐の白川、美濃市立花の長良川など県内6河川8カ所で氾濫が発生。高山市朝日町西洞や、瑞浪市釜戸町など県内5カ所で土石流やがけ崩れなど土砂災害も起こっている。長野県内では7月8日午後の段階で、道路への土砂流出などの影響で松本市や長野市、木曽町の3市町の計約390人が一時孤立した。県などは地区に通じる道路の復旧を急いでいる。 ・広島県・島根県(13日夜から14日午前の豪雨)広島県内では14日午前6時ごろ、東広島市河内町宇山で土砂崩れが発生し親子2人が行方不明となり、捜索の結果、同日午後死亡が確認された。島根県では西部を流れる江の川が14日午前9時半ごろ、下流域の江津市川平町と同市桜江町田津で氾濫が発生した。道路や農地の冠水が確認されている。 ・山形県・秋田県(26日から29日の豪雨)山形県では、29日朝までに最上川が大蔵村、大石田町、大江町、村山市の計6か所で氾濫し、多くの住宅で浸水被害が出た また、福部内川などの小河川でも氾濫が相次ぎ田畑や農作物への被害もあった。 【特記事項】 気象庁によると、7月上旬(1-10日)に全国のアメダスで観測した降水量の総和は20万8308.0mm(1地点あたり216.1mm)で、1982年以降の旬ごとで最大だった2018年7月上旬(平成30年7月豪雨(西日本豪雨))の20万7526.5mm(1地点あたり215.3mm)を超えた。また7月上旬に1時間50mm以上の降水が発生した回数は82回で、1982年以降最多だった2019年10月中旬(令和元年東日本台風)の69回を超えた。また気象庁によると、3日から14日(12日間)の全国の総降水量は25万3041.5mmで、23万3453.5mmだった平成30年7月豪雨(11日間)を超えた。

2019年8月 九州北部豪雨

【災害名】 令和元年8月の前線に伴う大雨(れいわがんねん8がつのぜんせんにともなうおおあめ) 【時期】 2019年(令和元年)8月27日から佐賀県と福岡県、長崎県を中心とする九州北部で発生した集中豪雨 【概要】 長崎県から佐賀県、福岡県にかけての広い範囲で、秋雨前線の影響で線状降水帯が発生し、8月28日を中心として各地で観測史上1位の値を更新する記録的な大雨となった。気象庁は8月28日早朝に、3県に大雨の特別警報を発表した。 【被害状況】 発表および報道によると、福岡県八女市で1名と佐賀県武雄市で3名が死亡となっている。大雨により福岡県の巨瀬川、佐賀県の牛津川、松浦川、長崎県の江迎川が氾濫、洪水が発生した。その他、福岡県南部や佐賀市などの市街地でも広範囲に冠水、佐賀駅構内なども浸水した。佐賀県多久市、小城市、杵島郡大町町、武雄市北方町などでも洪水により浸水、住民などが一時孤立した。ほか、福岡県で豪雨により直接、河川の堤防の斜面が一部崩れる被害も出たが、それによる決壊は無かった。佐賀、長崎、福岡の3県のほか、大分県日田市、中津市などでも一部土砂崩れや浸水による被害があった。佐賀市で28日時点、750世帯で断水、30日に解除。ほか、27日から30日にかけて福岡県八女市、長崎県佐世保市、壱岐市など合計2,915世帯で浄水場冠水や配水管破損のため断水した。雷や倒木、土砂災害により佐賀市、武雄市、小城市など320戸で27、28の両日に最大15時間停電。福岡県でも約360戸で停電した。 【特記事項】 27日から29日にかけて対馬海峡に秋雨前線が停滞し、集中豪雨をもたらす線状降水帯が生じた。28日5時50分、気象庁は佐賀県と福岡県、長崎県に大雨特別警報を発表した。対象地域の佐賀県は全域、福岡県は筑後地方(北部、南部)、長崎県は北部(平戸・松浦、佐世保・東彼)。この特別警報は、28日午後に解除された。29日には 長崎地方気象台が長崎県壱岐市で「50年に一度の大雨となっている」と発表した。福岡管区気象台などによると、台風11号から変わった中国大陸の低気圧、フィリピンで発生中の台風12号、日本はるか南の太平洋高気圧の3つの気象要因が重なり、九州北部の秋雨前線に大量の湿気を含んだ暖気が流入した事によると言う。

2018年7月 豪雨

【災害名】 平成30年7月豪雨(へいせい30ねん7がつごうう) 【時期】 2018年(平成30年)6月28日から7月8日にかけて 【概要】 6月29日に発生した台風7号は、太平洋高気圧の外側を回り込むように7月4日にかけて東シナ海を北上し、九州地方では台風の影響による雨が7月3日ごろから降り続いた。台風は対馬海峡付近で進路を北東に変えて日本海上に抜けたが、太平洋高気圧が張り出した影響で梅雨前線が7月2日から4日頃に北海道に停滞し、北海道の広範囲で雨量が7月の月降水量の平年値を超えた。その後、太平洋高気圧が南東に移動したことで梅雨前線が南下。7月5日から8日にかけて梅雨前線が西日本付近に停滞し、そこに大量の湿った空気が流れ込んだため、西日本から東海にかけて大雨が連日続いた。 【被害状況】 広島県法面が崩落した国道2号西条バイパス(広島県東広島市)広島県では、土砂崩れや浸水による被害が相次いだ。県の南部では土石流・土砂崩れが5,000箇所以上で発生(16日)。通常は崩落しにくい山頂部の崩壊も多発し、豪雨の凄まじさを裏付けた。県の住宅被害は浸水も含めると19日までに、38,000棟に及んでいる。安芸郡熊野町川角では、住宅の裏山が崩れて斜面沿いの住宅に押し寄せ、12人が死亡した。 広島市では、23人が死亡、2人が行方不明となっている。安芸区矢野東では、土砂崩れにより約20棟の住宅が倒壊ほか、矢野川では土石流により死者も出た。安佐北区でも土砂崩れにより3人が死亡したほか、東区馬木でも土砂災害が発生し、1人が死亡した。安芸郡坂町小屋浦地区の天地川では土石流が砂防ダムを破壊し、大量の土砂が住宅を襲い15人が死亡、1人が行方不明。また坂町中心部の坂駅付近が冠水した。 呉市では土砂崩れなどにより24人が死亡。呉市と広島市や東広島市がつながる道路が寸断され、JR呉線も不通となったため、孤立状態となり、呉港と広島港を結ぶ海路の利用が増えた。安浦町では約58haにわたって浸水し、760戸の住宅で被害が出た。東広島市河内町で、土石流が砂防ダムを超えて集落を襲った。同市西条町下三永では裏山が崩れて住宅が数十メートル流された。同市安芸津町木谷でも住宅が土砂に埋まった。三原市では土砂崩れで住宅が押し潰されたほか、本郷町で沼田川とその支流が氾濫し約700ヘクタールが浸水するなど8人が死亡した。竹原市では東野町と新庄町、港町の土砂崩れなど6人が死亡、4人が負傷した。市内を流れる賀茂川の氾濫もあり全壊35件、建物床上浸水35件、床下浸水232件の被害が出た。福山市では駅家町で農業用ため池が決壊し土砂崩れに巻き込まれるなど2人が死亡した。芦田川や手城川の支流では内水氾濫が発生したとみられ、市内の約20平方キロメートルが浸水した。安芸郡府中町では晴天下の10日11時頃、榎川が氾濫し町内の10ヘクタールが浸水した。 岡山県小田川決壊現場。自動車が決壊箇所に落ち込んでいる。岡山県では河川の氾濫や堤防の決壊による浸水、土砂災害が相次いだ。全半壊・浸水家屋の数は19日時点で少なくとも14,000棟にのぼり、県内の風水害による被害としては戦後最悪となった。 倉敷市の被害倉敷市真備町では7日朝までに小田川と支流の高馬川などの堤防が決壊し、広範囲が冠水。土木学会の調査によると、浸水の深さは南北1km・東西3.5kmの範囲で5メートルを超え、最大で5.4メートルに達したとみられる。浸水範囲は真備町の4分の1にあたる1,200ヘクタールに及んだ。国の調査委員会の見解によると、小田川では合流先の高梁川の増水に伴い水がせき止められるバックウォーター現象が発生し、越水により堤防の外側が削られ決壊したとみられる。真備町における堤防の決壊箇所は小田川で2箇所、支流の高馬川で2箇所、末政川で3箇所、真谷川で1箇所が確認され、小田川では他にも6箇所で法面の崩落が確認されている。 倉敷市を除く県内各地の被害岡山市では河川の氾濫などによる浸水家屋の数が7,645棟に上ったほか、土砂災害も相次いだ。東区沼では7日未明に旭川水系の砂川の堤防が決壊し、平島地区付近一帯の住宅2,230棟が浸水した。岡山県の調査によると平島地区の浸水範囲は約750ヘクタール、浸水の深さは最大約1.5メートルに達したとみられる。笠岡市茂平では7日朝、自動車部品会社の工場の裏山が崩れて土砂が流れ込み、6人が巻き込まれ2人が死亡。このほか笠岡市内で1人が死亡し、笠岡市北部の北川地区などで約380棟が浸水した。井原市では小田川の支流が決壊するなど市内で約300棟が浸水し、2人が死亡。小田郡矢掛町でも小田川の本流と支流が決壊し約600棟が浸水した。総社市内では昭和地区などの浸水と同市下原のアルミ工場爆発事故が重なり、被災家屋は968棟に上った。高梁市落合町でも6日夜に冠水が発生し、コンビニや老人ホームでは水から逃れようと利用者等が上階や屋根に登るなどして救助を待った。山陰地方島根県の江の川流域で200棟以上が床上浸水した。島根県は11日、江津市、川本町、美郷町に職員を派遣し、復旧などを手伝った。また川本町では浄水場の冠水により280戸が断水状態となった。 四国地方愛媛県では、西予市野村町で7日朝、野村ダムが満水に近づいたため緊急放流を行なったところ肱川が氾濫し、逃げ遅れた5人が死亡した。西予市によると、7日5時10分に防災行政無線で住民に避難指示を周知したという。国土交通省四国地方整備局によると、6時20分からダムへの流入量と同じ量の放出を開始し、6時20分時点で毎秒439立方メートルで放流していたのが7時50分には毎秒1797立方メートルに達した。またその下流にある鹿野川ダムでも、7時35分から流入量とほぼ同じ水量を放流する措置を取り、大洲市で川が氾濫した。大洲市では8日、概算で4600世帯の家屋浸水に及ぶ見通しを示し、二宮隆久市長は「今回の被災はかなり大きい」と述べ、平成以降最大規模との認識を強調した。宇和島市吉田町では7日、多数の土砂崩れが発生し11人が死亡し。松山市の怒和島では7日0時50分頃、住宅の裏山が崩れて1棟が倒壊し、3人が死亡した。 高知県では、香南市で6日朝、1人が香宗川で流され西に約100キロ離れた四万十市の海岸で遺体で発見された。大月町では2人が亡くなり、県内で計3人が死亡した。 安芸市では、6日未明に市内を流れる安芸川が栃ノ木地区で氾濫し、川沿いの東地の集落では約10棟が浸水被害に遭い、21人が一時孤立した。 九州地方・山口県山口県では7日までに、岩国市周東町で家の中に土砂が入り1人が死亡、また土石流に家ごと流されて1人が死亡、同県周南市では土砂で家が倒壊し1人が死亡。 福岡県では、6日朝に北九州市門司区で崖崩れが発生し住宅が全壊し2人が死亡。また7日までに、同県糟屋郡宇美町在住の1人が山中にあった老健介護施設から避難中に土石流に巻き込まれ死亡、筑紫野市原田の水路で発見された。6日には、北九州市小倉北区の板櫃川や久留米市北野町の大刀洗川など複数の河川が氾濫し、うち久留米市では広範囲が浸水、7日までに約1000棟(うち久留米市北野町地区で約500棟)が浸水被害を受け、ボートによる救助活動が行われた。北九州市では9日までに土砂崩れなどにより約680棟が被害を受けた。 佐賀県では12日までに、佐賀市大和町で嘉瀬川に流された1人が死亡、伊万里市で1人が死亡した。伊万里市の1人は長崎県松浦市の海岸まで約6km流され発見された。宮崎県では12日までに、1人の遺体が発見され、豪雨との関連を調べている。 近畿地方兵庫県の猪名川町で5日、物流センターの工事現場で作業員3人が排水管に流され、うち1人が死亡し2人が重傷を負った。宍粟市では土砂崩れにより住宅が押しつぶされ1人が死亡した。丹波市では市内各地で浸水被害が多発した。 京都府では、綾部市で土砂崩れで住宅が倒壊し3人が亡くなった。亀岡市では、川に車が流され1人が死亡。舞鶴市では自宅で土砂の除去作業中に行方不明になった男性が舞鶴湾で遺体で見つかった。福知山市大江町公庄では9日、土砂崩れにより谷河川がせき止められて天然ダムができていることが分かった。府内では舞鶴市や福知山市など、計2000棟以上で浸水被害が出た。舞鶴市の由良川流域では雨水などの内水が由良川へ流せずに浸水被害が発生。道路の冠水により舞鶴市加佐地域全域の1828世帯が一時孤立した。また道路の寸断も相次ぎ、伊根町全域が孤立したほか、6市町13地区が孤立状態となった。 中部地方岐阜県でも、関市をはじめ郡上市、下呂市などの中山間部で降り始めからの雨量が1000ミリを超える地点もあり、各地で土砂流出や道路の冠水、河川の護岸崩壊などの被害が相次いだ。関市では8日未明に津保川が氾濫、東部の旧上之保村・武儀町域を中心に225棟が床上浸水、270棟が床下浸水した。また用水路に車が横転し男性が死亡した。郡上市でも和良町の和良川沿いに建つ和良振興事務所周辺では、護岸が幅約200メートルにわたり崩れた。また下呂市でも6世帯15人が孤立。関市を中心に岐阜県内のJR高山線や東海北陸自動車道、中部縦貫自動車道などが寸断された。長野県では8日朝に王滝村で王滝川が増水し、幅約5メートルの村道が60メートルに渡り崩落した。 北海道北海道では堤防の決壊や内水氾濫に伴う床上・床下浸水、崖崩れ等の被害が出た。旭川市でぺーパン川が2回氾濫したほか、旭川市と深川市で石狩川が、沼田町と深川市で雨竜川が3日、氾濫した。オホーツク管内遠軽町では湧別川にかかる「いわね大橋」で橋脚に異常が発生し橋が折れ、上川管内東川町の天人峡温泉では道道の一部崩落で3日から宿泊客等130人が孤立。旭川市を中心に道内で132棟の建物に被害が出た。 【特記事項】 この豪雨により、西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生し、死者数が200人を超える甚大な災害となった。また、全国で上水道や通信といったライフラインに被害が及んだほか、交通障害が広域的に発生している。平成に入ってからの豪雨災害としては初めて死者数が100人を超え、「平成最悪の水害」と報道された。さらに、昭和にさかのぼっても1982年に300人近い死者・行方不明者を出した長崎大水害(昭和57年7月豪雨)以降、最悪の被害となった。

2017年7月 九州北部豪雨

【災害名】 平成29年7月九州北部豪雨(へいせい29ねん7がつきゅうしゅうほくぶごうう) 【時期】 2017年(平成29年)7月5日から6日にかけて 【概要】 平成29年7月九州北部豪雨(へいせい29ねん7がつきゅうしゅうほくぶごうう)は、2017年(平成29年)7月5日から6日にかけて福岡県と大分県を中心とする九州北部で発生した集中豪雨。 被害の規模は気象庁が豪雨について命名する基準(損壊家屋、浸水家屋の数)を下回ってはいたものの、人的被害が大きいことから、同年7月19日付で命名された。 【被害状況】 ・雨量の記録1時間雨量福岡県朝倉市朝倉:129.5mm(7月5日15時38分まで。観測史上1位を更新)大分県日田市日田:87.5mm(7月5日18時44分まで)長崎県南島原市口之津:82.0mm(7月6日6時35分まで。観測史上1位を更新)福岡県朝倉市寺内(福岡県設置の雨量計):169mm(7月5日15時20分まで)3時間雨量福岡県朝倉市朝倉:261.0mm(7月5日15時40分まで。観測史上1位を更新)大分県日田市日田:186.0mm(7月5日20時20分まで。観測史上1位を更新)福岡県朝倉市付近:約400mm(7月5日18時まで。解析雨量)9時間雨量福岡県朝倉市黒川(北小路公民館、県設置):778mm(7月5日20時50分まで。)12時間雨量福岡県朝倉市付近:約900mm(解析雨量)24時間雨量福岡県朝倉市朝倉:545.5mm(7月6日11時40分まで。観測史上1位を更新)大分県日田市日田:370.0mm(7月6日10時50分まで。観測史上1位を更新)福岡県朝倉市付近:約1000mm(7月6日8時まで。解析雨量)福岡県東峰村付近:約600mm(7月6日8時まで。解析雨量)福岡県大刀洗町付近:約600mm(7月6日10時まで。解析雨量)大分県日田市付近:約600mm(7月6日8時まで。解析雨量)72時間雨量福岡県朝倉市朝倉:616.0mm(7月7日6時0分まで。観測史上1位を更新)大分県日田市日田:447.0mm(7月7日6時10分まで) 2018年6月1日現在、消防庁によると、福岡県で37人(朝倉市で34人、東峰村で3人)、大分県日田市で3人の計40人の死亡が確認されている。また福岡県朝倉市で2人が行方不明になっている。住宅被害は、福岡県と大分県の合計で、全壊336棟、半壊1096棟、一部破損44棟、床上浸水180棟、床下浸水1481棟となっている(ただし台風3号による被害も含まれている)。静岡大学防災総合センター教授の牛山素行の調査によると、死者・行方不明者の被災原因は土砂災害が23人、洪水が18人だった。多数の家屋が洪水で流失しており、洪水の犠牲者が多いにもかかわらず多く(30人)が屋内で被災していることが、この豪雨災害の特徴である。河川の氾濫福岡県朝倉市では、蜷城地区で桂川が氾濫し。添田町で彦山川が氾濫した。大分県日田市では大肥川の一部が溢れ、一部地区の孤立が生じた。日田市では花月川も氾濫した。被災地には大量の流木が見られ、河川に流れ込んだ総量はおよそ20万トン、36万立方メートルにのぼると推定されている。土砂崩れでなぎ倒された杉などの木が川を流れ下り、川の流れをせき止めて氾濫させた。住宅地に押し寄せた流木によって、水流だけの場合よりも破壊力が増し、家屋に大きな被害をもたらした。 【特記事項】 7月4日まで北陸付近にあった梅雨前線が、7月5日から朝鮮半島から西日本付近に南下。5日朝方、島根県西部で発達した雨雲が帯状に連なる線状降水帯が発生し、記録的な降水となった。気象庁は5日5時55分、島根県(西部の浜田市・益田市・邑南町・津和野町)に大雨特別警報を発表した。5日午後には、福岡県筑後地方北部で次々と積乱雲が発生し、発達しながら東へと移動して線状降水帯が形成された。このため、同じ場所で長時間猛烈な雨が降り続いた。福岡県朝倉市、うきは市、久留米市、東峰村、佐賀県鳥栖市、大分県日田市などで1時間に100mmを超える雨量がレーダー観測から解析された。特に、朝倉市付近では3時間で約400mm、12時間で約900mmの雨量が解析され、気象庁以外が管轄する雨量計では、朝倉市寺内で5日15時20分までの1時間降水量169mm、朝倉市黒川(北小路公民館)の雨量計では5日20時50分までの9時間降水量778mm(1時間平均で約86mm)を観測した。この1時間降水量は自治体観測を含めた日本記録187mm(長崎県長与町・1982年長崎大水害)に迫るものであり、また9時間降水量では12時間降水量の気象庁観測日本記録695.0mm(高知地方気象台・1998年高知豪雨)を大きく上回っており、9時間という時間範囲内で見れば、朝倉市の山間部の降水強度は日本の気象観測史上でも最大級のものであった。5日17時51分、気象庁は「甚大な被害の危険が差し迫っている」として、福岡県の筑後地方と筑豊地方を中心とする地域に大雨特別警報を発表した。さらに19時55分には、大分県のほぼ全域にも大雨特別警報を発表した。7月6日3時10分、気象庁は大雨特別警報の対象範囲として福岡県の5市2町を追加し、これで福岡県の大部分と大分県のほぼ全域が対象となった。

2014年8月 豪雨による広島市の土砂災害

【災害名】 平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害(へいせい26ねん8がつごううによる ひろしましの どしゃさいがい) 【時期】 2014年(平成26年)8月20日 【概要】 2014年8月19日夜から20日明け方にかけて、広島市安佐南区八木・緑井・山本および安佐北区可部を中心としたごく狭い範囲に集中豪雨が発生した。「数百年に1回程度よりはるかに少ない確率」で発生した記録的集中豪雨であった。線状降水帯が発生し、3時間降水量は200ミリを超え、同時多発的に大規模な土石流が発生した。広島市災害対策本部のまとめでは、土砂災害166か所(うち土石流107か所、がけ崩れ59か所)が発生している。1.記録的集中豪雨が、2.午前1時半から午前4時の真っ暗で対応の難しい時間帯に、3.新興住宅地など人家が密集する住宅地後背の山々を襲った、の3つの悪条件が重なったことで甚大な被害を出した「都市型土砂災害」である。 【被害状況】 行方不明者の捜索は約1か月間におよび、災害における直接死は74人、これに2016年現在で災害関連死3人が加わり、死者77人となった。この災害死の数は、国土交通省の発表によると土砂災害による人的被害としては過去30年間の日本で最多であり、1983年7月に島根県西部で87人が死亡・行方不明となった豪雨(昭和58年7月豪雨)による土砂災害以来の大きな人的被害となった。広島市に限れば、1999年の6.29豪雨災害における土砂災害被害を上回った。近年まれに見る死者数の多さから、社会問題として大きく扱われた。住宅被害、電気・水道・ガスなどに加えて、交通網が集散する場所であったことからライフライン・インフラすべてにおいて大きな被害を受けた。避難勧告の対象範囲は大きく、避難所へはピーク時で904世帯・2,354人が避難したものの、安全が確認されるまで長期にわたり避難所での生活を余儀なくされた。前半は大竹市、廿日市市など広島市南西側の沿岸部で降り始め、線状降水帯の発達にともない徐々に広島市内へと続いていった。この時点での1時間降水量は、廿日市市役所46ミリ(19時20分 - 20時20分)、広島地方気象台45.5ミリ(21時20分 - 22時20分)と、どの地点でも50ミリを超えなかった。広島市中心部では19時30分ごろから雷が鳴り始め、20時ごろより雨が強くなり、20時から22時にかけて広島市内の約9,400軒が停電した。平和大通りなどでは膝下まで道路が冠水(内水氾濫)し、広島高速4号線上り線で中広出入口が冠水したため通行止めになる(23時解除)など市中心ではさまざまな被害が出ていた。後半は新たな線状降水帯が東進しながら急速に発達・合体したことによるもので、20日1時から4時に安佐南区・安佐北区を中心とした局地的領域に停滞し時間の経過とともに猛烈な雨が降った。20日1時30分から4時30分までの3時間降水量は、安佐北区役所・安佐北区上原・安佐北区三入東・安佐北区三入の4地点で200ミリを超え、150ミリを超えたのはその4地点を含めて約8キロ×約15キロのごく狭い範囲に集中した。 【特記事項】 災害発生時の8月19日夜から20日朝、北海道付近から対馬海峡付近にかけて南西の方向に秋雨前線が延び、前線は日本海海上にあってその南に中国地方が位置し、前線に向かって日本の南海上から暖かく湿った空気が流れ込む状況にあった。このとき広島市付近では、上空の寒冷渦の影響などで大気が不安定であるとともに、下層(地表付近)では豊後水道を通って南から暖かく湿った空気が流入する一方、上空1,500メートル(850hPa)付近や3,000メートル(700hPa)付近では強い南西の風となっていた。下層の南風は、広島市の西方にあたる広島・山口県境付近の山地にぶつかって地形性の上昇気流を起こし、積乱雲を発生させる。これに上空の南西風がぶつかって積乱雲を強化しつつ、風下である北東の方向に押し流した。これにより、積乱雲が連続的に発生する「バックビルディング現象」が起きた。

2000年9月 東海豪雨

【災害名】 東海豪雨(とうかいごうう) 【時期】 2000年(平成12年)9月11日~12日にかけて 【概要】 2000年9月7日頃から本州付近に秋雨前線が停滞しており、11日から12日にかけて、台風14号の東側を回る暖湿気流が前線に向かって流れ込んだため、前線の活動が活発となり、愛知・三重・岐阜県の東海地方を中心に、雷を伴った非常に激しい雨が降った。 11日夕方ごろから、名古屋市をはじめとする中京地区を中心とした広範囲にわたり大きな被害をもたらし、2日間の積算降水量は多いところで600ミリ前後に上った。 名古屋市では11日の日降水量が、平年の9月の月降水量の2倍となる428ミリとなり、2日間の合計降水量が567ミリに達した。 愛知県東海市では11日の午後7時までの1時間に114mm、日降水量492mmを記録した。 【被害状況】 消防庁によると、東海地方(静岡県・岐阜県・愛知県・三重県)で10人が死亡し、全国で115人が重軽傷を負った。経済的被害は2700億円を超え、1959年の伊勢湾台風以来の水害となった。 名古屋市周辺で多数の浸水被害が生じたほか、中部地方太平洋側の広い範囲で浸水、河道護岸の損壊、崖崩れ、土石流などによる災害が発生した。 この災害により、愛知県名古屋市、一宮市、春日井市、西春日井郡師勝町(現・北名古屋市)・西春町(現・北名古屋市)・清洲町(現・清須市)・西枇杷島町(現・清須市)・新川町(現・清須市)・豊山町、豊明市、半田市、刈谷市、大府市、岩倉市、東海市、知多郡美浜町・東浦町、海部郡甚目寺町(現・あま市)・大治町、北設楽郡稲武町(現・豊田市)、岐阜県恵那郡上矢作町(現・恵那市)の21市町に災害救助法が適用された。 名古屋市周辺で最も浸水被害が激しかったのは、天白区野並地区で、天白川とその支流の藤川の堤防に囲まれた堤内地が水面より遥かに低い地形だったため、行き場を失った雨水が集中し、ポンプ場から天白川に排水した水が、そのまま藤川の支流の郷下川(ごうしたがわ)を逆流して、再度野並地区に流入するという悪循環を繰り返し、やがて地区の住宅の1階は完全に水没し、住居内での溺死者も発生した。ポンプ場も浸水して機能停止したため、水が引くまでに相当の時間を要することとなった。 一方、元々旧市街地を洪水から守る庄内川放流路としての新川洗堰の向こう側に広がった名古屋市内の庄内川水系新川では、長さ100メートルにわたる破堤があったほか、愛知県内で少なくとも10か所で破堤し、名古屋市中川区下之一色町では、洗堰での分流にもかかわらず庄内川が堤防高を超えて溢水するなど、各地で多数の越流があった。 下之一色町三角地区のうち、県道の橋より南側にある集落は浸水により居住不能となり消滅した。 この結果、新川流域(名古屋市西区山田地区、西春日井郡西枇杷島町・新川町(現・清須市))、庄内川流域(名古屋市中川区、春日井市)、天白川流域(名古屋市天白区・南区・緑区など)、境川・逢妻川流域(大府市、知立市、刈谷市、知多郡東浦町など)、名古屋市周辺で多数の浸水被害が生じた。 【特記事項】 岐阜県では矢作川流域を中心とした恵南地域に多大な被害が出たため、この豪雨に関して岐阜県内に限っては恵南豪雨とも呼ばれる。 この地域では家屋が壊れたり流されたりする深刻な被害が出た。 しかしマスコミ報道では、比較的被害の軽かった名古屋市周辺の報道が集中し、取り上げられることはほとんどなかった。 期間降水量は、三重県多気郡宮川村(現・大台町)で1,090ミリとなったほか、四国から東海地方で800〜1,000ミリに達した。 大雨は静岡県・山梨県にもおよび、これらの広い地域で2日間の合計降水量が200〜400ミリとなったところがあった。