【災害名】

平成29年7月九州北部豪雨(へいせい29ねん7がつきゅうしゅうほくぶごうう)

【時期】

2017年(平成29年)7月5日から6日にかけて

【概要】

平成29年7月九州北部豪雨(へいせい29ねん7がつきゅうしゅうほくぶごうう)は、2017年(平成29年)7月5日から6日にかけて福岡県と大分県を中心とする九州北部で発生した集中豪雨。
被害の規模は気象庁が豪雨について命名する基準(損壊家屋、浸水家屋の数)を下回ってはいたものの、人的被害が大きいことから、同年7月19日付で命名された。

【被害状況】

・雨量の記録
1時間雨量
福岡県朝倉市朝倉:129.5mm(7月5日15時38分まで。観測史上1位を更新)
大分県日田市日田:87.5mm(7月5日18時44分まで)
長崎県南島原市口之津:82.0mm(7月6日6時35分まで。観測史上1位を更新)
福岡県朝倉市寺内(福岡県設置の雨量計):169mm(7月5日15時20分まで)

3時間雨量
福岡県朝倉市朝倉:261.0mm(7月5日15時40分まで。観測史上1位を更新)
大分県日田市日田:186.0mm(7月5日20時20分まで。観測史上1位を更新)
福岡県朝倉市付近:約400mm(7月5日18時まで。解析雨量)

9時間雨量
福岡県朝倉市黒川(北小路公民館、県設置):778mm(7月5日20時50分まで。)

12時間雨量
福岡県朝倉市付近:約900mm(解析雨量)

24時間雨量
福岡県朝倉市朝倉:545.5mm(7月6日11時40分まで。観測史上1位を更新)
大分県日田市日田:370.0mm(7月6日10時50分まで。観測史上1位を更新)
福岡県朝倉市付近:約1000mm(7月6日8時まで。解析雨量)
福岡県東峰村付近:約600mm(7月6日8時まで。解析雨量)
福岡県大刀洗町付近:約600mm(7月6日10時まで。解析雨量)
大分県日田市付近:約600mm(7月6日8時まで。解析雨量)

72時間雨量
福岡県朝倉市朝倉:616.0mm(7月7日6時0分まで。観測史上1位を更新)
大分県日田市日田:447.0mm(7月7日6時10分まで)

2018年6月1日現在、消防庁によると、福岡県で37人(朝倉市で34人、東峰村で3人)、大分県日田市で3人の計40人の死亡が確認されている。
また福岡県朝倉市で2人が行方不明になっている。住宅被害は、福岡県と大分県の合計で、全壊336棟、半壊1096棟、一部破損44棟、床上浸水180棟、床下浸水1481棟となっている(ただし台風3号による被害も含まれている)。
静岡大学防災総合センター教授の牛山素行の調査によると、死者・行方不明者の被災原因は土砂災害が23人、洪水が18人だった。
多数の家屋が洪水で流失しており、洪水の犠牲者が多いにもかかわらず多く(30人)が屋内で被災していることが、この豪雨災害の特徴である。

河川の氾濫
福岡県朝倉市では、蜷城地区で桂川が氾濫し。添田町で彦山川が氾濫した。
大分県日田市では大肥川の一部が溢れ、一部地区の孤立が生じた。
日田市では花月川も氾濫した。
被災地には大量の流木が見られ、河川に流れ込んだ総量はおよそ20万トン、36万立方メートルにのぼると推定されている。土砂崩れでなぎ倒された杉などの木が川を流れ下り、川の流れをせき止めて氾濫させた。
住宅地に押し寄せた流木によって、水流だけの場合よりも破壊力が増し、家屋に大きな被害をもたらした。

【特記事項】

7月4日まで北陸付近にあった梅雨前線が、7月5日から朝鮮半島から西日本付近に南下。5日朝方、島根県西部で発達した雨雲が帯状に連なる線状降水帯が発生し、記録的な降水となった。
気象庁は5日5時55分、島根県(西部の浜田市・益田市・邑南町・津和野町)に大雨特別警報を発表した。
5日午後には、福岡県筑後地方北部で次々と積乱雲が発生し、発達しながら東へと移動して線状降水帯が形成された。
このため、同じ場所で長時間猛烈な雨が降り続いた。福岡県朝倉市、うきは市、久留米市、東峰村、佐賀県鳥栖市、大分県日田市などで1時間に100mmを超える雨量がレーダー観測から解析された。
特に、朝倉市付近では3時間で約400mm、12時間で約900mmの雨量が解析され、気象庁以外が管轄する雨量計では、朝倉市寺内で5日15時20分までの1時間降水量169mm、朝倉市黒川(北小路公民館)の雨量計では5日20時50分までの9時間降水量778mm(1時間平均で約86mm)を観測した。
この1時間降水量は自治体観測を含めた日本記録187mm(長崎県長与町・1982年長崎大水害)に迫るものであり、また9時間降水量では12時間降水量の気象庁観測日本記録695.0mm(高知地方気象台・1998年高知豪雨)を大きく上回っており、9時間という時間範囲内で見れば、朝倉市の山間部の降水強度は日本の気象観測史上でも最大級のものであった。

5日17時51分、気象庁は「甚大な被害の危険が差し迫っている」として、福岡県の筑後地方と筑豊地方を中心とする地域に大雨特別警報を発表した。
さらに19時55分には、大分県のほぼ全域にも大雨特別警報を発表した。
7月6日3時10分、気象庁は大雨特別警報の対象範囲として福岡県の5市2町を追加し、これで福岡県の大部分と大分県のほぼ全域が対象となった。