【災害名】

平成17年台風第14号(へいせい17ねんたいふうだい14ごう)

【時期】

2005年8月29日~9月8日にかけて

【概要】

この台風は、大東島地方に接近してから山陰沖へと抜けるまで、広い暴風域を維持したまま比較的遅い速度で進んだため、長時間にわたって暴風や高波、大雨が続いた。 3日から8日までの総雨量は、九州・中国・四国地方の各地で9月の月間平均雨量の2倍を上回り、宮崎県では1,000mmを超えた。 宮崎県南郷村神門では1,322mm (月間平均雨量比2.9倍) 、えびの市で1,307mm (月間平均雨量比2.8倍)、鹿児島県肝属郡肝属町肝属前田で956mm (月間平均雨量比3.2倍) に達した。 また、九州・中国・四国の各地方と北海道の62地点では、それまでの日雨量の記録を更新したほか、台風の接近・上陸に伴い各地で暴風、高波となった。 4日には南大東島で最大瞬間風速55.6m/s、6日には鹿児島県種子島で同59.2m/s、屋久島で同58.1m/sが観測された。 この台風によって、熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県を中心に九州~東北地方で土砂災害、大雨による浸水などが起きた。また、岡山県・広島県・香川県では高潮による床上・床下浸水も発生した。 人的被害は、宮崎県を中心に全国で死者・行方不明者29人に達した。台風が日本の南海上を移動中の3日から4日にかけ、台風から本州上に停滞する秋雨前線に向かって暖かく湿った空気が流入。 3日には鳥取県・京都府・新潟県・福島県で1時間に約60mmの非常に激しい雨が降り、鳥取県では日雨量が100mmを超えた。 4日夕方から5日未明にかけては東京都・埼玉県・神奈川県など首都圏でも、大気の状態が不安定となって雨雲が急速に発達し、東京都と埼玉県では局地的に1時間に100mmを超える猛烈な雨となった。 この期間の降水量は、東京都が設置した雨量計によるデータでは杉並区下井草で264mm、久我山で240mm、練馬区上石神井で240mmに達した。

【被害状況】

日本各地の被害状況 ※死傷者が出た被害、その他主な被害のみ記載 九州地方 宮崎市で竜巻が発生、家屋や車などを破壊。 鹿児島県垂水市でがけ崩れと鉄砲水で4人死亡。 熊本県阿蘇市の豊肥本線が倒木にぶつかりガラスにひびが入る。 宮崎県三股町で土砂崩れ、住宅が倒壊。2人死亡。 宮崎県北部の高千穂鉄道高千穂線にある五ヶ瀬川に架かる二つの鉄橋が崩落。 復旧を断念し、3年後の2008年12月で全線が廃線となった。 宮崎県椎葉村で土砂崩れ、民家3棟が全半壊。1人死亡、2人行方不明。 宮崎県高千穂町で土砂崩れ、家屋が倒壊。3人死亡、1人行方不明。 宮崎県の大淀川・五ヶ瀬川・小丸川流域で浸水が多数発生。宮崎県内の床上・床下浸水は2,253戸。 特に高岡町、宮崎市小松、延岡市での被害が大きい。 熊本県五木村築切の国道445号が数ヵ所で損壊した。 四国地方 瀬戸内海沿岸の都市では、9月6日から7日未明にかけて、高潮による被害が出た。 強風であおられて、宇高国道フェリーの甲板から女性が海中に落下し死亡した。 愛媛県大洲市の肱川が氾濫した。 愛媛県新居浜市船木の客谷川の堤防が約30メートルにわたり決壊した。 徳島県石井町において、自転車が風で水路に転倒し1人死亡。 中国地方 山口県岩国市の錦帯橋の橋脚の一部が流された。 山口県の山陽自動車道岩国IC~玖珂IC間上り線の一部が崩落して家屋が押しつぶされ3人死亡。 山陽自動車道自体も12月1日まで通行不能に。 広島県宮島町の厳島神社が浸水した。 広島県宮島町で土石流が発生した。 広島市西区の草津漁港に大量の流木やゴミが漂着し、漁船の使用に支障をきたした。 広島市を流れる太田川放水路に、安佐北区で起こった土砂崩れにより川に大きな砂洲ができた。 近畿地方 北陸地方 福井県永平寺町の曹洞宗大本山永平寺境内にある同県文化財指定の中雀門西側渡り廊下が、倒れてきた木に押しつぶされた。 関東地方 9月4日夜から5日にかけて、この台風から秋雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、積乱雲が数時間に渡って発生するバックビルディング現象が起きた。 関東地方各地で非常に激しい雨が降り、床上浸水・冠水・停電などの被害が出た。 特に東京都杉並区などでは1時間に100ミリ以上と東京都での観測史上としては最大の雨量が記録され、石神井川・妙正寺川・善福寺川・神田川では増水被害が出た。

【特記事項】

韓国南部でも記録的な大雨となり、各地で洪水、浸水、土砂崩れがあった。 日降水量 蔚山地域で591.5ミリ。 慶州市甘浦邑で509.5ミリ。 慶州市楊口面獐項里で477.5ミリ 浦項市チャンジ面で441.3ミリ 江原道三陟市遠徳邑臨院里で360.7ミリ 慶尚北道蔚珍郡北面下塘里で350ミリ。 被害 蔚山市北区で川に流され1人行方不明。 慶尚南道咸安郡郡北面の南海高速道路で観光バスが道路から約3メートル下に転落。