【災害名】

平成23年台風第12号(へいせい23ねんたいふうだい12ごう)

【時期】

2011年8月25日~9月5日にかけて

【概要】

2011年(平成23年)8月25日にマリアナ諸島付近で発生した、発生後徐々に発達しながら北上したが、亜熱帯高圧帯の気圧の尾根と太平洋高気圧によって進路を失い、小笠原諸島近海で停滞。一度西進した後、勢力を保ちながら再びゆっくりと北上し、四国地方へ上陸。 その後も速度を速めることなくほぼ真北へと進路を取り、岡山県・鳥取県を縦断し日本海へと抜けたのち温帯低気圧となった。 温帯低気圧になった後、日本海上でも偏西風による方向転換はなく北海道の西岸沖に向かっていき、北海道南東の海上から近づく台風13号も影響して伊達市で1日の降水量240.5ミリを記録するなど、東北・北海道に大雨を降らせた。 なお、当初の予報では、小笠原諸島からそのまま北上し、関東地方や東北地方の太平洋側を通過するものとみられていた。台風が大型で動きが遅かったため長時間にわたり周辺の非常に湿った空気が流れ込み、西日本から北日本にかけての広い範囲で大雨となった。 特に台風の中心から東側に位置した紀伊半島では総降水量が広い範囲で1,000mmを超え、奈良県上北山村にあるアメダスでは72時間雨量が1976年からの統計開始以来、国内の観測記録を大幅に上回る1,652.5mm、総降水量は1,808.5mmに達し、一部の地域では解析雨量が2,000mmを超えるなど記録的な大雨となり各地で甚大な被害をもたらした。

【被害状況】

全国で98人の死者・行方不明者が出た。これは平成の台風被害としては平成16年台風第23号と並び最悪のものである。他に、負傷者113人、住宅の全壊380棟、半壊3,159棟、一部破損466棟、床上浸水5,499棟、床下浸水16,592棟の被害が出た。和歌山県では災害関連死として6人が認められている。 土砂災害 9月1日、台風の接近に伴う大雨の影響で関東と紀伊半島を中心に被害が発生し、埼玉県本庄市・飯能市・小鹿野町で土砂崩れが発生した。2日には、三重県名張市においても発生した。4日午前0時過ぎには和歌山県田辺市伏菟野地区で土砂崩れが発生して住宅が全壊し、高校生ら5人が死亡した。 土砂に飲み込まれた対岸の集落(川からの高さが約10mの高台)では10月1日現在、5人が死亡し6人が行方不明となっている。田辺市内では熊野地区でも土石流が発生して民家1棟が流され、2人が死亡、1人が行方不明となった。 新宮市南檜杖では土砂崩れで4人が死亡した。 4日午前7時過ぎには、奈良県五條市の大塔町で大規模な土砂災害が発生した。清水地区で高さ180m、幅250mにわたって土砂が崩落し、増水した幅60mの天ノ川を乗り越えて対岸の宇井地区にせりあがり、川から約50mの高さまで達した。 紀伊半島で発生した大規模な土砂崩れについては、雨が地中深くまで浸透して岩盤の深い部分から大きく崩れる深層崩壊であると指摘されている。 他にも紀伊半島では土砂崩れによる道路の通行止めが多数発生し、世界遺産の熊野那智大社では裏山が崩れ、本殿の一部が土砂で埋まる被害が発生した。 河川の氾濫 9月3日、奈良県十津川村野尻地区では、川が土砂でせき止められ氾濫、村営住宅2棟が倒壊し2人が死亡、6人が行方不明となった。 同村長殿地区では、川の増水で家屋が流され全壊、2人が死亡、1人が行方不明になった。 天川村では増水した川に住宅2棟が流され、1人が死亡した。五條市大塔町宇井では、増水した川に民家数軒が流されるなどして、8人が死亡、3人が行方不明となった。 4日には、上流にあたる十津川村などに降り注いだ雨が熊野川に流れ込み、下流の和歌山県新宮市・三重県紀宝町などで氾濫した。新宮市熊野川町日足地区では、熊野川の増水により3人が死亡、熊野川行政局の庁舎3階近くまで浸水した。紀宝町浅里地区では広範囲にわたって水没し、1人が行方不明となった。 しかし、これらの被災地に向かう道路(国道168号など)が土砂災害や浸水などにより寸断された影響で、孤立した集落が多数確認された。十津川村は一時全村孤立した状態となった。 那智川でも河川の氾濫が発生し、那智勝浦町井関・市野々地区では川沿いにある集落の家が押し流され、多数の犠牲者が発生した。また、山体崩壊により、河川上で津波の特性を持つ段波が発生した。 岡山市では、笹ヶ瀬川や足守川で水位上昇により氾濫したため、市内全域の人口の3分の1にあたる23万8595人に避難勧告・指示が出た。さらに、姫路市でも市川が避難判断水位を超えたため9万9732人に避難勧告を発令した。

【特記事項】

8月30日17時から9月5日24 時までの総降水量は、紀伊半島を中心に広い範囲で 1000ミリを超え、奈良県上北山村上北山での総降水量が 1814.5 ミリとなるなど、多いところでは年降水量平年値の6割になった。